子供の頃背負っていたランドセルの背中を見事に再現してくれたotonaランドセル。
幼い自分に安心感を与えてくれた背中に中年になって触れた感動は忘れられるものではなかった。
そして、土屋鞄なら、この背中を用てのバックパックを、いつか作ってくれるのではないだろうか、とバックパック好きの私は期待した。
気づけば発売されていた。
乗り遅れたかと思ったが、間に合った。
土屋鞄といえば、革の表情を個性としているので、北海道在住の通販しか頼れない私は、それがネックだった。
土屋鞄から言わせれば頑固だな、とか、革を理解していないなってことになるが、私とて、土屋鞄さん同様にこだわりがある。
革は、好みの表情しか受け入れない。だから、返品しては、わざわざ東京に買いに行くことも多々ある。
さて、この度は、用事で東京にいたので、これは直接お店に伺って、モノを見てみたいと思い、新丸ビルに行った。
その店で、トーンオイルヌメのようなあたたかみのある柔らかい穏やかなお姉さんから、日本橋に展示品があると教えていただき、急ぎ向かった。
土地感がない私は、JRの高架下の寿司屋のお母さんに訊いたりして、
日本橋店になんとかたどり着いた。
日本橋店で対応してくれたスタッフは、いままでの土屋鞄との出来事やいきさつ、こちらの革への思いとこだわり、など、そっと引き出すように、聴いてくれました。
「東京」の洗練されたどこか距離をとるようなイメージとは全く異なって、人情を湛えた「江戸っぽい」、なんとか助けになろうって感じの方でした。
革の表情にこだわり強い私は、予約するようなつもりはほとんどなかったのですが。
その方と話して、その鎖が解かれたようで、気づけば予約に舵をきり、向かいのコンビニATMにダッシュしていました。
そして、消費者心理にある返品は申し訳ない、という思いも払拭させてもらい、安心の下、予約し、その日を待ちました。
店に入荷直後に、私のニードに叶わないかもしれない、とその方から連絡がありましたが、返品を念頭に送っていただきました。
で、見てみると、あられびっしりで黒光りする南部鉄器かと見紛う革でした。
私が望む「均一」ではないかも、と言われましたが、ツブの一定というより、全体を見たバランスは、十分ニードを満たしたものでした。
ツブの一定も、その方の目は厳しいものでしたが、私には許容範囲でした。
その方がいかに全力で私の言うことを聞いて、それを満たしてくれようとしたのが、伝わりました。
一連を有り難く思い購入させていただきました。
商品は、バックパックのくせに、ランドセルの背中。
これで十分、the土屋鞄、で十分満足しています。
7年前に買ったotonaランドセルのイタリアンレザーのエイジング体験半ばで、ツルツルギラギラになっております。
この度のバックパックも、どう成長するのか楽しみで、購入から2ヶ月半、まだ世間にデビューさせずに、なでまくっております。
一部ファスナーを変え、コバ切りしカスタマイズを行い、南部鉄器と相まって、ガメラのような超武骨バックパックにしてしまいました。
土屋鞄のコンセプトに違うかもしれませんが、死ぬまでの相棒なので、わずかですが手を加えました。
それをデビューさせる日が楽しみなのですが、、、
一点、個人的な難。
カッチリしたotonaランドセルと異なり、フォルムが保てない。
私はB5の重い辞書を普段から持ち歩いているので、下の空間が後ろに張り出し、そこのサイドポケットの空間もやたら外に押し出される。
フォルムが良かっただけにそれを入れるものにより形を損なうのが、痛い。
ですが、これは、硬い芯材でケースを作ればなんとかなりそうです。
全てにおいて、自分の最強バゲージとなること間違いなしです。
土屋鞄様、そして購入に至るまで関わってくれたみなさんのおかげで、これからの人生にさらに彩りを与えてくれるものとなっています。
有難うございました。
そして、なんとか私の助けになろうとしてくださった好青年は、この度本店に異動になり、丁寧な挨拶を送ってくださいました。
東京に、行った折には、必ず伺いたいと思っています。
私の物欲は、このバックパックで節目を迎え、新たに何かを購入したいというものは落着しましたが、時々無視できない作品を世に送り出す土屋鞄のことですから、また奮い立ってしまうかもしれません。
その時も、あの方に相談させていただこうと思っています。
またお世話になるかもしれませんが、その時もどうかよろしくお願いします。
こちらの想いを汲んでくださる土屋鞄スタッフと鞄を選べば、その鞄への想いも強くなり格別になります。
生き物から作られたものですから、無機質な通販と違い、有機的に携わる人たちと関わることで、より思いの詰まった鞄にして、それを活かしていくのも、いいものだと、この度、思いました。
思い出深いサイドストーリーのある逸品とともに、これからを歩んでいきます。